「まあ、少し音がするくらい大丈夫だろう」。トイレからの小さな異音に気づきながらも、日常生活に支障がないため、つい放置してしまう人は少なくありません。しかし、その小さなサインを見過ごした結果、思わぬ高額な修理費用がかかる事態に発展してしまうケースがあるのです。ある一人暮らしの高齢女性、佐藤さん(仮名)の事例をご紹介します。佐藤さんは、数ヶ月前から自宅のトイレで「シュー」という微かな音がするのに気づいていました。しかし、水が止まっているようにも見えたため、「古いトイレだから仕方ない」と特に気に留めず、そのままにしていました。ところが、ある日、水道料金の請求書を見て驚きます。普段の倍近い金額が請求されていたのです。不審に思った佐藤さんは、水道メーターを確認したところ、家中の蛇口を閉めているにも関わらず、メーターのパイロット(小さな円盤)がゆっくりと回り続けていることに気づきました。原因を探ると、やはりトイレから音がしています。以前よりも音が大きくなっているようにも感じました。慌てて水道業者に連絡し、点検してもらったところ、トイレタンク内部のボールタップという給水部品が完全に壊れており、水が止まることなく便器に流れ続けていたことが判明しました。業者の話では、かなり前から水漏れが続いていたようで、その分の水道代が無駄になっていたとのこと。さらに、長期間水が流れ続けていた影響で、タンク内の他の部品にも負荷がかかり、排水弁のゴムも劣化が進んでいました。結局、ボールタップと排水弁の両方を交換することになり、部品代と作業費で数万円の費用がかかりました。加えて、数ヶ月分の無駄になった水道代も自己負担です。佐藤さんは、「あの時、すぐに業者さんに見てもらえば、こんなことにはならなかったのに…」と深く後悔していました。この事例のように、トイレの異音は、単に不快なだけでなく、水漏れのサインであることが多いのです。微量な水漏れでも、24時間365日続けば、水道代は着実に増加します。また、部品の劣化を放置することで、他の部品にも負担がかかり、故障箇所が広がってしまう可能性もあります。さらに深刻なのは、水漏れが床下などに及んだ場合です。気づかないうちに床材や建物の構造部分を腐食させ、大規模な修繕が必要になるケースも考えられます。